業務用エスプレッソマシンの選び方

 

業務用エスプレッソマシンの選び方で最も重要なことは、「その店にとって、どれだけの能力のマシンが必要なのか」を見極めるということです。

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具体的には、時間あたりの抽出杯数です。

これは、店舗の席数、業態、メニュー構成、立地・客層、テイクアウトの有無などにより変化します。

 

・ 店舗の席数が多ければ当然抽出杯数は増えます。

・ 業態がカフェであれば、カフェメニューの出数は当然増えますし、レストラン業態であれば食後の一杯程度で、かつ1組みあたりの滞在時間(食事時間)が長いので、出数は減ります。

・ドリンクが居酒屋のようにアルコール中心のメニュー構成であればカフェメニューへの依存度は下がります。

・ビジネス立地や駅近であれば、カフェ需要が大きくなりますので、杯数が見込めます。

・シアトル系カフェのように、テイクアウトメニューが多ければ、出数は大きく増える傾向になります。

 

 

これらの情報から、1日にどれぐらいの杯数を抽出するかをまず検討します。

 

次に、時間あたりの杯数を考えます。

仮に「1日100杯」の抽出を見込んだとして、営業時間を10時間とし、コンスタントに1時間に10杯づつ出るなら、「1時間10杯」の提供能力のマシンとオペレーションを考えればいいわけです。しかし営業時間10時間の中で、ランチタイムの12時~13時の1時間で50杯。残りの時間でコンスタントに5杯程度のケースなら、同じ1日100杯提供だとしても、「1時間50杯」の抽出を想定したマシンとオペレーションが必要になってきます。当然、「一番出数が多い時間帯」を捌くことが出来る環境を整えなければいけません。

 

 

次に、その1時間あたりの抽出杯数の内訳を考えます。エスプレッソ中心の提供なのか、カプチーノ中心の提供なのかによって、オペレーションも大きく変わります。マシンの能力という観点から言えば、カプチーノ中心であればスチームを沢山使うわけですので、その分マシンのパワーが求められてきます。

 

 

このように、1時間あたりに提供するMaxの杯数と内容、それを供する最低限必要な能力が出てきたら、予算と相談して、マシンやグラインダーなどの環境を検討する流れです。

 

 

再度言いますが、大切なことは「その店にとって、どれだけの能力のマシンが必要なのか」です。

 

「マシンは高ければ高いほど良い」:これは基本性能の面では間違いありません。

「マシンは大きければ大きいほど良い」:これはパワーの面では間違いありません。

 

確かに、グループヘッド数が増えてパワーが大きくなればそれだけ連続抽出杯数能力は上がりますし安定もしますが、「大きいほどいいか」というとまた別問題です。単純に本体価格も跳ね上がりますし、それだけ、設置には広いスペースも必要になります(カフェメニュー以外のオペレーションスペースを圧迫するということです)。もちろん消費電力(電気代)も増えますし、「そもそもそんなに大きなマシンが必要になるほどの杯数を抽出するのか?」という根本的な問いがあります。実際、僕の店では開店当時は2連のマシンを導入していましたが、営業していく中でそこまでの必要性は無い事が分かったため、パワーのある1連のものに入れ替えを行いました。

 

カフェの開業コンサルティングをしていると、マシンの導入に関するご相談も多くお受けいたします。「安定した抽出をしたいので、実際は1連で十分事足りるのだけど、あえてパワーを求めて2連を選ぶ」というのはわりと聞く話ですし、資金的な余裕があるならば、選択肢かと思います。「エスプレッソの味に拘りたいから」という理由から、グループヘッド毎に抽出温度を変えられるような高性能・高機能な機種を求めるのも、店舗コンセプトと合わせて検討する価値のある内容だと思います。

 

 

しかしながら、過剰に大きなマシンを求める必要はなく、要は「自らの現実的なニーズに合ったもの選ぶ」というのが一番だと思います。

 

なぜなら店舗において資金や物理的スペースは有限であり、「そこにお金をかけるぐらいなら、もう少しこっちにお金をかけた方がお客さまのためになるのじゃないか?(もっといいお店になるのではないか?)」とか、「そのお金でエントランス周りを整備したほうが集客になるんじゃないか?」というケースも、ままあるからです。

 

また、店舗においてのエスプレッソマシン購入は、マシン単体ではなく、グラインダーをはじめとするオペレーション全体で考える必要があります。例えば、マシンに資金をかけすぎた結果、グラインダーがお粗末なものになってしまっては、せっかくのマシンも宝の持ち腐れです。もしかしたらマシンの価格を抑えてピッチャーリンサーを導入した方が、結果的にオペレーションをスムーズにできてお客様の満足度が上がるかもしれません。そういった、ドリンク周りトータルでの検討が必要だと思います。