タンパーとは

 タンパー(Tamper)は、タンピング時に使う道具です。

 

 タンピングとは 「tamp(突き固める、詰め固めるの意)」の通り、ポルタフィルターに詰めたコーヒー粉を平らに押し固める作業のことで、タンパーは、この時に使用されます。




 

 美味しいエスプレッソを抽出するための要素「4つのM」のうち、4番目のMano(人の技術)に関わる、重要なアイテムです。

 

 タンパーの外観はこのような感じです。

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 土台(ベース)の上に、持ち手(ハンドル)が付いています。

 ハンドルは金属製とウッド(木製)のものがあり、ハンドルとベースは取り外し可能なタイプと、一体型のタイプがあります。(僕が使っている この写真のものは、イタリア「MOTTA」社の58mm径ウッドハンドル。ベースはステンレスで、高さは約95mmです。)

 

 タンパーはとてもしっかりした作りをしており、重量も350g前後から、重いものになると500gを超えるものまであります。

 

 家庭用のエスプレッソマシンを購入すると、多くの場合、付属品としてプラスチックのタンパーがついてきます。

 

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 こちらは、ボンマックのエスプレッソメーカー BME-100に付属するアクセサリ。プラスチック製。片方が計量スプーン。片方がタンパーになっており、これはこれで高機能といえます。(大きいから無くさないしね!)

 

 「単純に押し固めるだけならこれで十分じゃない?」と思われるかもしれませんが、エスプレッソマシンの9気圧の抽出パワーに負けないよう、15~20Kg前後の力で安定したタンピングをしようとすると、頼りなさは否めません。それに毎回安定したタンピングを行うことは、正直、プラスチック製では困難です。

 

 こういった理由から、僕は、きちんとしたエスプレッソの抽出には、しっかりしたタンパーは不可欠と断言します。

 

 一部例外として、イタリアのバリスタなんかは、グラインダーに備え付けられた、簡易タンパーでタンピングを行う場合があります。

 

 これは鬼のような怒涛の注文を捌くイタリアンバールのバリスタにとって「その方が早いから」というのが一番の理由です。しかし、「往々にしてグラインダーの簡易タンパーはポルタフィルターの内径とサイズが合わないこと」と、「下から上に持ち上げる力より、上から下に押さえつける力の方が安定すること」の2点から、お勧めはしません。彼らは、圧倒的な杯数を捌くことによって積み上げた「膨大な経験値」でそれを安定させているだけの話で、簡単に真似が出来るものではありません。

 

タンパーベースの形状

 タンパーベースの底面(コーヒーとの接地面)には、様々な形状があります

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こちらは、「フラット」形状。

接地面が真っ平らな、一番スタンダードなタイプです。

 

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こちらは「Cリップル」

同心円状の溝が底面中央に切ってあります。

 

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「Cフラット」

Cリップルと同じく端がカットされていますが、底面は平らです。

 

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こちらもCフラットですが、上のものと比べるとカットがより深く切れ込んでおり、ユーロカーブに近いようなシェイプをしています。

 

 現在流通しているタンパーベースの形状は、大きく6つあります。

 

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  • フラット … ベース面全体が真っ平ら。
  • Cフラット … ベースセンターはフラット。端の部分斜めにカットされている。
  • USカーブ … ベース面全体が緩やかなカーブ状。
  • ユーロカーブ … ベース面全体が、USカーブよりも大きな(強い)カーブ状。
  • リップル … ripple(波、波紋)。タンピング面全体に同心円状の刻みが付けられている。
  • Cリップル … ベースセンターはリップル。端の部分が斜めにカットされている。

※USカーブ・ユーロカーブのカーブ系を、コンベックス(CONVEX:「凸型」の意)と呼ぶこともあります。

 

 ベース形状が違えば、当然タンピングの仕上がりも変わりますので、抽出にも変化が起きます

 

 たとえばC(カット)系やカーブ系の特徴として、タンピングの仕上がりが「外周部分より中央が凹む」という点があります(底面中央が盛り上がっていますから当然ですね)。

 

 これは、抽出時にバスケット中央より外周部分の方が湯の浸透が早く始まるので(高い圧力で抽出されたお湯は、逃げ場を求めて まず外の方に行くから)、真ん中をくぼませることで、湯の浸透度合いを均一にすることを目的としています。同時に外周部にしっかりした土手を作ることで、湯の逃げ道を塞ぐ役割も果たします。

 

 また、タンピングした際にタンパーに粉が付きにくいという人もいますが、このあたりは粉自体が持つ水分(湿気)や油分の方が強く影響するので、個人的には感覚の違いだと思います。

 

フラットの特徴

 フラットはタンピング時の水平が取りやすいことが長所です。

 タンピング後にも、水平なタンピングが出来たかどうかが、ぱっと見てすぐに視認できます。しかし、きちんと水平にタンピング出来ないとフィルターバスケットの中に満遍なく湯が行き渡らず、不完全抽出になってしまう欠点もあります。

 

カーブ系の特徴

 カーブ系は、仕上がりを見て水平なタンピングが出来たかどうかがすぐに分かりづらいという欠点はありますが、多少水平が狂ってもお湯がまず中央の窪みに流れるため、結果的に湯が全体に行き渡りやすく、抽出が安定しやすいという利点があります。

 

C(カット)系の特徴

 端がカットされている「C」系も、理屈としてはカーブ系と同じです。バスケット外周に土手を作ることで、湯を中央に通し、抽出を安定させることが出来るというのが利点です。

 

リップル系の特徴

 リップルは、タンピングの仕上がり時に出来る段差で、表面積を増す事を目的として作られています。

 これにより湯の通りが良くなり、ムラなく均一な抽出が出来るとされています。リップルは抽出後のエスプレッソの味が柔らかくなるというひともいますが、個人の感覚によってくると思います。

 

 こうしてみると、いずれも「詰められた粉全体に、いかに万遍なく湯を行き渡らせるか」ということを念頭にベース形状がデザインされているかが分かると思います。

 

 エスプレッソマシンばかり使っていると抽出自体は機械任せなのでつい忘れがちですが、普通のコーヒーをハンドドリップで落とす際の留意点が「全体に満遍なく湯を行き渡らせる」ことなのを考えれば、それがいかに重要な要素なのか分かるでしょう。

 

 エスプレッソ抽出後にポルタフィルターから落としたコーヒーの出し殻を「コーヒーケーキ」と呼びますが、このコーヒーケーキの色が不均一だったり、チャネルが多く空いていたりすると、湯の浸透が均一ではなかったということです。

(※チャネル:とくにコーヒーケーキの外周に出来やすい、穴(す)のこと。チャネルは、湯がコーヒーを通らずフィルターに直接素通りしたことで出来た穴です。多かれ少なかれ出来るものではありますが、チャネルが多い=コーヒーをきちんと通らず、沢山の湯が素通りしている=不完全抽出がおきて水っぽいエスプレッソになっている、という可能性が出てきます)。

 

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 こういったケースが多く見られる場合は、グラインダーのメッシュ調整やタンピング技術を再度見直す他に、タンパーの形状を交換してみるというのも、もしかしたら一手かもしれません。

 

 もちろん、タンピング技術やグラインダーのメッシュの見直しが先決なのは言うまでもありませんが。

 

 

 

タンパーの選び方

 タンパーの価格は2,000円前後から、高いものだと2万円前後まで。

 

 価格の違いの多くは、材質やブランドの差によるものです。たとえばエスプレッソマシンであれば、2万円のマシンと20万円のマシンでは、10倍の性能差があると僕は思っているのですが、2,000円のタンパーと2万円のタンパーで、10倍の性能差があるかというと、それは「無い」と思います。

 

 多くの店舗で使用されているものは、5000円~1万円ぐらいのものが主流(なんじゃないかな)と思います。

 

 ベースの材質は、ステンレスが中心ですが、アルミニウムのものもあります。当然、アルミの方が軽いです。

 

 ある程度の値段のものであれば、精度が狂っている(底面が水平じゃないとか、ハンドルがベース中央にまっすぐ付いていないとか)ことは、よほどのことがない限り無いと思います。

 

 タンパーはとてもしっかりした作りをしています。普通に使用する分には、そうそう壊れるということは考えられないため、一本買えば一生使えるアイテムです。

 

 買い換えるとすれば、「新しくエスプレッソマシンを買ったので、バスケットに合わせて違うサイズのタンパーが必要になった」「落として壊した(聞いたことないですけど。)」「憧れのあのバリスタと同じタンパーを持ってみたい」「どうもハンドルの握りがしっくりこない」「底面形状の違いによる抽出の変化を試してみたい」といった理由かと思われます。もし理由が最後のものであれば、もう十分、この世界にマニアのレベルでハマっていると思います。

 

 選び方ですが、形状に関しては、初めての方が最初の一本を購入されるのであればフラットベースをお勧めします。理由は、水平にタンピングされたかどうかが視認して分かりやすいからです。まずは、きちんと水平にタンピングが出来るようになること。そこからはじめて、それ以外の形状を試すといいでしょう。

 

 材質は、重量感のあるステンレスを選ぶか、取り回しのしやすいアルミを選ぶかは好みです。アルミニウムは柔らかい金属のため傷がつきやすいので、より丁寧に取り扱うよう心がけましょう。

 

 

 最も重要なのは、サイズ(直径)です。

 

 使用するエスプレッソマシンのポルタフィルターの、バスケットの内径に合わせたものを選びましょう。サイズの合わないタンパーで行ったタンピングなど、しないのと変わりません。

 

 現在、49mm~58mmまでのサイズが市販されています。業務用マシンの多くは58㎜内径ですが、家庭用のマシンですと50mm前後のものも結構ありますので、フィルター内径ジャストか、1mm程小さなものを選ばれると良いと思います。

 

 例えばボンマックやデロンギのマシンなら51mmがいいと思います(50~52が許容範囲で、53だと入りません)。

 

 

タンパーリスト

 

 著名なブランドですと、まず名前が上がるのはなんといってもカナダの「REG BARBER」(レッジ・バーバー)です。

 ハンドメイド・ハンドルからメタルハンドルまで、高品質なものを多く手掛けています。

 

 

 僕も使っていますが、イタリアのエスプレッソサプライ・メーカーのMOTTA(モッタ)。

 

 その他、アメリカの Rattleware(ラトルウェア)やVIVACE ERGO-PACER(エルゴ・パッカー)、オーストラリアのPullman(プルマン)の他、イタリアではチンバリやデロンギなどの各マシンメーカーもタンパーをラインナップしています。

 

 

 こちらはデロンギの家庭用マシン専用のメーカー純正タンパー。径は50.5mmです。

 

 

家庭用マシンに合う、51mmタンパーの高コスパモデル。

 

 そのほか、特殊形状としては、ハンドルの無い、フラットタンパー(ハンドルレスタンパー、マカロンタンパー)もあります。

 こちらはベース部分がネジ式になっていて高さの調節が可能で、「粉をどこまで沈みこませるか」を予め設定してロックしておけるものです。つまり、上から抑えてトップ部分がフィルターに当たるところまでタンピングすれば、ベースは常に一定のmm数沈み込んでいる、という具合です。

 

 バリスタ選手権などで、競技バリスタが使っているのをよく見ると思います。

 

 確かにカッコイイのですが、ただ、これは「どのような豆を何グラム使い、どれだけの細かさでグラインドして、どれだけの深さ(つまり圧力)でタンピングを行い、何mlのエスプレッソを何秒かけて何度の湯温でどれだけの圧力で抽出する」というのが予め完成されたオペレーションで最大限の効果を発揮します。

 

 その都度豆や、その使用量、グラインドが変わってしまうような状況では、あまり意味をなしません。

 

 簡単に言えば、上級者向きです(笑)

 

 また、タンピングスタンドやタンピングマットも、あると便利だと、個人的には思っています。

 

 

 

 楽天だと、こちらのお店さん(Fa Coffee楽天市場店さん)が、サイズ・種類と豊富にラインナップされておられるのでお勧めです。