ラテアート(Latteart)とは、ラテ(Latte:イタリア語で「牛乳」)とアート(Art:英語で「芸術」)を合わせた混成語です。

 

 「カプチーノやカフェラテの上に絵柄が描かれたもの」をラテアートと呼ぶことが多いですが、ココア、抹茶といった、カプチーノ以外のものにも描くこともできるので、広い意味では「ラテ(牛乳)を使った飲み物の上に絵柄が描かれたもの」という表現もできます。現在、日本では様々なタイプのラテアートが供されているので、こちらの認識の方が一般化しつつあるかな、と思います。

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※カプチーノとカフェラテの違いについては、こちらのページも合わせてご覧下さい。

カプチーノとカフェラテの違いって? ~ エスプレッソドリンクのバリエーション ~

 ラテアートの手法については、大きく分けて、ミルクを注ぐピッチャーの動きと、そのミルクの対流だけを利用して描く「フリーポア」と、

 

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 楊枝などの道具を使って絵柄を描く「エッチング」の2つがあります。

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 純粋に「コーヒー」を愛する人は特に、その美味しさに本質があるという点に強いこだわりを持たれるので、「フリーポア以外はラテアートとは認めない」という方もいます。

 

 「時間をかければ味・温度が落ちるし、ココアやシロップ足したら味が変わってしまう。抹茶? そんなものは、そもそもカプチーノじゃない。」という理由です。

 

 僕自身も、いちコーヒー好きとしてその気持ちは分かります。

 

 ですが、一方でサービスマンとしての立場では、エッチングやカラー着色といった、そういう方からすると「邪道」かもしれないラテアートで作られた一杯をお客様にお出しした際、どれだけ喜んで頂けるかを数限りなく見ていますので、ラテアートの定義は、もう少し柔軟でいいのかなと思います。


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 味を追求するなら、フリーポアが一番なのは疑いありません。時間をかければかけるほど、反比例曲線で味は落ちていきます。確かにその点はマイナスです。

 

 ですが、手をかけることで違う価値を加えて、差し引きが(そのお客様にとって)トータルでプラスになるのなら、それもラテアートの意義ではないでしょうか。

 

 「お客様に少しでも喜んで頂きたい」という気持ちの表れ、おもてなしの心がラテアートであるはずで、それこそがサービス業である飲食店にとって最も大切な事(もしかしたら美味しいコーヒーを入れる事よりも)だからです。

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 もちろん、エッチングに手をかけることが、そのお客様にとってトータルでマイナスになるのであれば、やるべきではないでしょう。

 

 お客様によって求めているものは違うので、「全てのお客様のニーズを満たせるよう、選択肢を広げる努力をする」のも、十人十色のお客様を相手にするプロのサービスマンであるバリスタの、ひとつのあり方なんじゃないか、と僕は思います。実際やるかどうかはケースバイケースとしても。

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 味を重視しているお客様がフリーポアでのラテアートを求めていられるのに、「僕はエッチングしかやりませんから。」と時間をかけて可愛いクマのラテアートを描くことは、本当にお客様のことを考えたサービスでしょうか?

 

 また、可愛いラテアートを求めて来た女性のお客様に、「あぁいうのはね、味が落ちるんですよ。」と頑迷にフリーポアしか出さないというのも、本当にお客様のためのサービスか疑問です。

 

 もちろん、店としてのスタンスや考え方、ポリシーはあります。やらないならやらないで、お客様に納得して頂ける説明は必要になってくるでしょう。

 

 少し話が逸れましたが、客観的な事実としては、世界最高峰のラテアートの大会の一つである「ワールド ラテアート チャンピオンシップ」では、エッチングも、チョコレートシロップや着色料、ココアパウダーの使用も、表面デコレーションに関してはOKです(競技種目は限定されますが)。つまり、そういったものも公式に「ラテアート」と扱われています。

(この点に関しては、こちらのページで詳しく述べています)

ラテアートの種類 ~「エッチング=デザインカプチーノ」という誤解~

 

 どこまでをラテアートの許容範囲とするかは、意見が分かれるところでしょう。

 

 ですが、コーヒーは最終的には「嗜好品」ですので、十人いれば十人の判断基準があると思います。いずれにせよ、たかだか30年そこそこの歴史しかない、まだ出来て新しい技術。

 

「明確な定義は無い」ことが事実なのは、間違いありません。

(ラテアートの定義についてのは、こちらのページに詳しく記載しています)

ラテアートの定義の変化 ~ 嗜好品である以上、その実態は変わっていくもの ~