「エッチング」とは、ピックなどを使って絵柄を描くスタイルのラテアートです。

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 ラテアートについて、インターネットに書かれている記述をみていると、エッチングで描かれたラテアートについて、

 

「そーゆーの(エッチング)はラテアートじゃなくて『デザインカプチーノ』って言うんだぜ。何も道具を使わずにやる(フリーポア)のがラテアートだから。」

 

・・・みたいなことを書いてあるのを見かけます(特にTwitterで)。

 

 ハッキリと言いますが、これは明らかな誤りです。

 

 そもそも、仮に「エッチングで描いたラテアートをデザインカプチーノと呼ぶ」とすれば、カフェラテにエッチングでラテアートを描いた場合、それは何と呼べばいいでしょう?

 

 まさかカフェラテなのにデザイン「カプチーノ」と呼ぶわけにもいかないでしょう。デザインカフェラテ、なんて聞いたことないですしね。
(カプチーノとカフェラテの違いはこちら。)

カプチーノとカフェラテの違いって? ~ エスプレッソドリンクのバリエーション ~


 つまり、この時点で既に「エッチング=デザインカプチーノ」ではない事はハッキリしています。

 

 そもそも、なぜこんな誤解が生まれたのかと考えると、スペシャリティーコーヒー協会主催の「ラテアート・チャンピオンシップ」という競技会が原因なんじゃないかなというのが、僕が想像するところです。

 

 このラテアート・チャンピオンシップは、「コーヒーフェスト・ラテアート選手権」と並んで、ラテアート界では最も著名な大会の一つです。

 

 現在「ラテアートの世界チャンピオン」といえば、大体この2つの大会のどちらかで世界一になった人のことを言います。(これとは別に、「バリスタ」としての世界チャンピオンを決めるバリスタ・チャンピオンシップという大会もあります)

 

 ラテアート・チャンピオンシップには世界大会(WLAC:ワールド・ラテアート・チャンピオンシップ)があり、国内大会(JLAC:ジャパン・ラテアート・チャンピオンシップ)が、その日本代表選考会を兼ねています。なので当然、国内大会の競技ルールは世界大会に準じて行われます。

 

 JLACに出場すると、競技者は3種目を行い、合計点数で順位を争います。

 

 競技種目は

 

①カフェラテ/カプチーノ

②エスプレッソ・マキアート

③デザイナー・ラテ

 

の3つで、競技ルールの要点をまとめると、下記の通りです。

 

ジャパンラテアートチャンピオンシップ

 

 この3つを、各2杯づつ。計6杯を、8分間の競技時間の中で作成します。

 

 で、本題ですが、この③のデザイナー・ラテでエッチングを使う人が多いです。

 

 まぁ当然といえば当然です。競技①②とフリーポアをやっていますから、③では大なり小なり「違う要素」を取り入れて、前の2競技との差別化を図り、審査員に印象付けたいところです。

 

 この時(競技者の多くが)エッチングをやっているのを見て、「あぁ、こういうのをデザイナー・ラテって言うんだ。注ぐだけのやつ(フリーポア)とは違うジャンルなんだ。」と、ここだけを見たネットの方が部分解釈してしまった結果が、「エッチング→デザイナー・ラテ → デザインカプチーノ」という誤解に至ったのじゃないかな思うんですが、どうなんですかね(笑)。

 

 実際は「ラテアート・チャンピオンシップ」という大会の、いち競技種目なわけですから、エッチングも当然ラテアートに含まれます。

 

 ラテアートには色々な方法があり、様々な種類のドリンクに絵柄を描くことも出来ます。

 

 そのラテアートを正確に表現しようとするなら「(A:手法名称)で(B:飲み物名称)に描いたラテアート」という言い方になるでしょう。(例:「フリーポアでカフェラテに描いたラテアート」)

 

 ここでA(手法)を縦軸。B(飲み物の種類)を横軸とした、ラテアートの分類方法をイメージしたものを作ってみました。

 

ラテアートの分類 

 

 「縦軸×横軸」。つまり、「フリーポアでカプチーノに描いたラテアート」というような表現です。これなら正確に伝わると思います。(フルカラーはエッチングに含めました)

 

 「デザインカプチーノ」の説明としては、ご覧のとおり、「エッチング×カプチーノで描いたラテアートのことを、こう呼ぶ場合もあります」という表現が一番正確だと思います。

 

 種類の「その他」としては、具体的には、ココアなどの飲み物が考えられます(紅茶にフリーポアはちょっと難しいですが)。

 

 ただ一点、ラテアートチャンピオンシップのデザイナーズ・ラテに関して、3Dが認められるかは疑問が残ります。

 

 「表面デコレーションは何を行っても良い」とされていますが、3Dが「表面」に当たるのかどうか。。。表面というか、「その上部の空間」までも占有していますからね。審査員によっては「飲み物の表面」と扱われない可能性もあると思います(僕の知る限り、大会で やった人がいないのでなんとも言えないです。制限時間内に作るのが難しいですし)。なので、ここだけグレーゾーンだと思います。

 

 手法の「その他」は、現状ちょっと思いつかないですが、今後どんな新しい手法が出てくるか分からないので一応付けておきました。