グラインダー(Grinder)とは

 Grind(挽く、細かく砕くの意)が示すとおり、コーヒー豆を挽く機械です。

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 「ミル(Mill)」も同じ用途の道具ですが、ミルが 小型・手動・粗挽きから大型・電動・細挽きまで幅広く使う言葉であるのに対し、グラインダーは電動・大型・極細挽き対応が出来る機種を指すことが多いです。

 


 従って、エスプレッソ用途で豆を挽くのであれば、「グラインダー」と呼ばれるタイプのものを探すことになります。

 

 グラインダーは美味しいエスプレッソを淹れるための要素「4つのM」のうちの2つ目「Macinino(マチニーノ)」に当たります。これはグラインダー自体を指す言葉ですが、転じて「適切な挽き目・メッシュ(粗さ)でコーヒー豆を挽く」ことを意味しています。

 

 グラインダーは、エスプレッソを淹れるための必須アイテムではありません。無ければ挽いてある豆を買えばいいわけですから。ですが、業務としてエスプレッソを淹れる店舗であればもちろん、家庭でも美味しいエスプレッソを飲みたいと思えば、是非とも手に入れたいアイテムです。

 

 

それには2つの理由があります。

 

① 挽きたてを使うことが出来る。

 最大の理由がこれです。コーヒー豆は、焙煎直後から1週間ほど炭酸ガス(二酸化炭素)が出るので、必ずしも「焙煎したて」が良いわけではありません。むしろ焙煎後にはガス抜きの静置時間が必要です。

 しかし、「挽く」という点に関しては問答無用で「挽きたて」がベストです。

 

 なぜなら、挽いた直後から空気と接した表面の酸化(劣化)が始まるからです。エスプレッソ用の極細挽きは表面積が大きいので、特にこれが顕著です。

 

② メッシュ(挽き目)の微調整が可能

 グラインダーが「4つのM」のうちの1つなのは前述の通りですが、その「適切な粗さ」は、いつも同じではありません。

 

 コーヒー豆が変われば当然、最適な粗さは変わりますし、焙煎後どのぐらい経過した豆なのかや、豆の油分の回り方の変化、その日の湿度によっても「最適」が変わります。日本は湿度が高いので、特に環境の変化を受けやすいです。

 

 グラインダーが無い場合は、購入店舗で挽いてもらうか、既に挽いてあるパッケージを買うことになりますが、当然、1パックまるごと同じ挽き具合で購入することになります。その時々のコンディションによって変化する「最適」に対応するためには、自分でグラインダーを所有するほかない、ということです。

 

 

次に、グラインダー各部の説明に移ります。


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 上から順に、コーヒー豆を入れるところがホッパー。その蓋がリッド(普通に「カバー」とも)。ホッパー(Hopper)は、「ろうと状の器」という意味です。

 

 ホッパーの中のコーヒーの量は、ある程度の量が入っていないと、豆の落ち方(挽くスピード)が安定しません。少ないと、豆が落ちる時に刃のところで豆が跳ねてしまうからです。

 

 常に同じ量の豆が入っているよう小まめに補充するのがベストですが、「目安として7割。半分を切ったら補充する」ぐらいの感覚でいいと思います。

 ただ、豆の消費回転の早い業務店舗であれば、「豆はホッパーの半分以上入れましょう」でいいと思うのですが、そこまで回転が早くない店舗や、ご家庭で使用される分には、半分以上も豆を常に入れておくことが必ずしも必要かというと、そうではないと思います。

 

 放置時間が長くなれば、それだけ豆自体の酸化を早めるので、必要最低限(最低限豆が跳ねない程度)以外は冷凍なり密閉瓶なりで保管した方が、結果的に全体のカップクオリティーは上がると思います。

 

 ホッパーの下部に、メッシュ(挽き目)を調節するためのダイヤルがあります。このメッシュを調整する作業を、カリブレーション(Calibration)といいます。カリブレーションを行うことで、適切な抽出時間でエスプレッソが落ちるよう調整します。

 

 挽いた豆は、ドサーチャンバー(ドサーケース、単にドサーとも)と呼ばれる、一時的に挽いた豆を溜めるストックスペースに入ります。

 

 ドサーチャンバーに入った粉を出すのが、ドーシングレバーです。これを動かすことで、

このように内部機構が回転し、粉が落ちる仕組みです。

 

 このドサーチャンバーが無いタイプのグラインダーもあり、その場合は、豆の挽き口から直接ポルタフィルターに粉を受けます。

ドサーレス

 

 「チャンバーが無い」ということは、つまり「挽き過ぎた豆を戻せない」ということでもあります。

 

 挽き過ぎは即・豆のロスに繋がりますから、適切な稼働時間で動作させることが必要です(設定時間で自動で止まる機種もあります)。しかし逆に言えば、チャンバーに挽き溜めた豆ではなく、常に挽きたての豆を使うことが出来るメリットがあります。

 

 ドサーチャンバーがあるタイプのものも、店舗なら忙しい時間帯の挽き溜めは許容範囲内と考えますが、挽いて長時間置いたものを使うことは避けることが望ましいでしょう。ドサーチャンバー付きのタイプには、使った分だけ自動で挽き溜めを行い、一定量が溜まるとストップする機種もあります。

 

 電源スイッチは、シンプルなON/OFFタイプの他、キッチンタイマーのようなタイプ(ねじった分だけ動く。動いたら止まる)のものや、完全デジタル制御のスイッチ(作動秒数の設定が可能)のものもあります。ドサーチャンバーの無いタイプのものには、メインスイッチの他に、粉の排出口下部にドーシングスイッチがあるものもあり、ドーシング時は、これにポルタフィルターを押し付けることでON/OFFが出来ます。

 

 以上が、各パーツの外観と説明です。

 

グラインダーの種類と選び方

 グラインダーの種類というと、先ほど述べた「ドサーチャンバーの有無」やスイッチ機能(手動・自動)の違いの他、豆を挽くための刃(ブレード)の違いがあります。

 

 ブレードは、大別して「フラット刃」と「コニカル刃」の二つの形状があります。

 この二つのブレードの違いと特徴、選び方については、こちらのページをどうぞ。

フラット刃とコニカル刃 ~ エスプレッソ用グラインダーの特徴と選び方 ~

 

 

メンテナンス

 

 コンサルティングなどで臨店すると、意外とグラインダーのメンテナンスが知られていません。

 

 豆に直接触れる箇所ですので、味にもダイレクトに影響します。特にフラット刃のグラインダーは、刃に豆の油脂が詰まると切れ味への影響度が非常に大きいので、定期的に清掃を行いましょう。

 

 詳しくはこちらの記事に。

グラインダーのメンテナンス ~美味しいエスプレッソを淹れるために重要な清掃箇所~

 

グラインダーカタログ

 インターネットで入手可能なグラインダーについてリストアップしています。

 

 エスプレッソ挽きが可能なグラインダーの多くは海外製なので、通販サイトを見ていると、「正規輸入品」「並行輸入品」という文字が出てきます。

 

 「正規輸入品」は、メーカーと契約をしている会社や、メーカーの日本法人が直接メーカーからのルートで輸入しているもの。

 

 「並行輸入品」は、それ以外の会社や個人が、一般流通品を海外で買い付けて国内に持ち込んでいるものです。「違法」というわけではなく、こちらも輸入のひとつの形です。

 

 並行輸入品のメリットは、正規に比べて安いことです。2~3割安く買えることがあります。ただし、購入後の修理やメンテナンス・アフターケアなどが無い事もあります。

 

 予算の関係もありますので最終的には自己判断となりますが、個人的には、「服とかは修理やメンテナンスが必要になることはあまりないけど、電気製品は壊れたり出荷時に不具合があったりする場合もあり、故障したらタダのゴミになってしまう。だから電気製品に関しては高額な買い物ほど、できる限り正規輸入品の方がいいのではないか?」と考えます。

 

 以下、家庭用・業務用のグラインダーを集めてみました。

購入の際の参考になれば幸いです。

 

家庭用機種(廉価帯):~3万円

 家庭用でエスプレッソのための極細挽きが出来るグラインダー機種のスタートラインです。

 こちらのページからご覧下さい。

家庭用グラインダー(廉価帯):~3万円

 

 

家庭用機種(中価格帯):2万円~5万円

 家庭用グラインダーの、中価格帯です。

 廉価帯と価格が被っているところもありますが、そこは性能差を意識した区分けになっています。

家庭用グラインダー(中価格帯):2万円~5万円

 

 

 

家庭用機種(高価格帯)/ 業務用機種~: 5万~約10万円

 家庭用としては、このあたりがハイエンドとなる機種群です。

 

 機能だけではなく、性能(メッシュの均一性など)も一段グレードアップしますので、エスプレッソの味も違いが出てきます。

 

 逆に、業務用として使用する分には、このあたりがスタートラインになってくると思います。

家庭用機種(高価格帯)/ 業務用機種~: 5万~約10万円

 

 

上位機種(業務用):10万円~

ここからは、業務用の価格になってきます。

 

主だったメーカーをリストとしてまとめました。

こちらのページからどうぞ。

 

業務用グラインダーメーカーリスト