ハートのラテアートの描き方には、大きく分けて2つのパターンがあります。
一つは、「ピッチャーを振らない方法」。
ピッチャーを振らない方法(上)は、クレマ部分とのコントラストがはっきりしやすく、パッと見てモチーフがいかにも「ハート」であることが明確に主張できることが特徴です。
ピッチャーを振る方法(下)は、振らない方法(上)に比べて輪郭が層のようになるのが特徴で、「レイヤーハート」と呼ぶ人もいます。
どちらが良いというわけではなく、どちらにもそれぞれの良さがあるので、自分の好みだと思います。
それではまず、工程がシンプルな「ピッチャーを振らないタイプ」から描き方を見ていきましょう。
ピッチャーを振らないハートのラテアート
① まず最初に、ラテアートの下地となる、キャンバスを作ります。
キャンバス作りは、こちらのページで詳しく解説していますのでご覧ください。
斜め45度にカップを構えて、
エスプレッソの一番深い所めがけて差し込むようなイメージで、高い所(カップから5~10㎝の高さ)から、真っすぐにミルクを注ぎます。
キャンバスの完成です。このキャンバスの高さで、このあと作るハートの大きさが、ある程度決まってきます。
・キャンバスが低い → 大きなハートになる。
・キャンバスが高い → 小さなハートになる。
② キャンバスが出来たら、ピッチャーをカップに近づけます。
近づけるとミルクが浮いてくるので、真ん中か、真ん中より気持ち手前の位置で注ぎ始めます。
この時の注ぎ位置で、ハートの仕上がり位置が決まります。
「ミルクが浮いてこない!」という場合は、
・ フォームドミルクの仕上がりが緩い(空気の含ませ方が足りない)
・ピッチャーの近づけ方が甘い(カップとの距離が遠い)
・注ぐ前のピッチャーのスイングが甘い(フォームドミルクとスチームドミルクが分離していて、スチームドミルクばかり注がれている)
・ピッチャーの傾け方が甘い(スチームドミルクばかり注がれている)
・キャンバスが固い(クレマが厚すぎる、キャンバスの高さが低い)
などが考えられます。
③ カップを水平に戻しながら位置を固定して注ぎ続けると、注ぎ位置を中心にして、ミルクがぐるりと巻き込み、ハート型を作ります。
この時の時間を長く取ればとるほど、大きなハートになります。
(従って、長く取ろうと思ったら、キャンバスを低く作る必要があります)
またピッチャーの傾きを深く傾けることでも、注がれるフォーム(泡)が増えることでハートを大きく作ることが可能です。
④ 液面がカップ一杯まで来たら、ピッチャーを持ち上げながら奥に真っすぐ切って(カップを手前に引いても可)、ハートの形を作ります。
ハートのラテアートの完成です。
クレマとミルクのコントラストが綺麗に出るといい感じです。
ピッチャーを振るハートのラテアート(レイヤーハート)
① キャンバスを作る工程は、ピッチャーを振らないタイプと共通です。
② キャンバスが出来たら、ピッチャーをカップに近づけます。
ミルクが浮いたら、ピッチャーを振ります。
③ カップの傾きを水平に戻しつつ注ぎ、対流によって層になったミルクが注ぎ口を中心にぐるりと円を描いたところで、ピッチャーを振るのを止めて注ぎ口を固定し、タメを作ります。
④ 液面がカップ一杯まで来たら、ピッチャーを持ち上げながら奥に真っすぐ切って、ハートの形を作ります。
レイヤーハートの完成です。輪郭の層の数が多いほど、繊細な印象を与えることが出来ます。
「ピッチャーを振る」というアクションには、「クレマにショックを与える事でクレマを破り、フォームを浮かせる」という意味合いもあり、ミルクの浮かびをコントロールしやすいという理由から、「振る方法の方がやりやすい」という人もいます。この辺りは、自分でやってみるのが一番だと思います。
注意するポイント
何回か練習すれば、「とりあえずハートっぽい形」を作ること自体は、そう難しくないことに気づくと思います。
ハートのラテアートにおいて最も難しいのは、単に形を作ることではなく、①「丁度いい大きさ」のハートを、②「綺麗な形」で、③「カップの真ん中」に、④「コントラストをくっきり」と描くことです。
①「丁度いい大きさ」・・・にするためには、キャンバスの高さが重要です。
キャンバスの高さが高い(左)と、低い(右)時に比べて描き出しが遅くなるので、
仕上がりの大きさは小さくなります。
自分の理想の大きさはをイメージして、そのサイズを作るのに合った高さでキャンバスを仕上げるようにしましょう。
注ぎの角度で泡を浮かべるスピードを調節することでサイズを変える方法もありますが、基本はキャンバスの高さで調節した方が毎回安定したものを作ることが出来ます。
②「綺麗な形」・・・にするのに最も手こずるのは、
注ぎ終わりでピッチャーを切る動きだと思います。
ポイントは、ピッチャーを持ち上げながら(注ぐのを終えながら)切る事です。ハートの先の所ジャストで注ぎ終わるのが一番理想です。
また、「ピッチャーを奥に切るのが苦手」という人は、「カップを持つ手を手前に引く」方法もあります。
どちらでもいいので、試してみてやりやすい方で。
③「カップの真ん中」・・・に描くためには、注ぎ位置が最も重要です。
注ぎ口が真ん中か、真ん中より少し手前が理想です。真ん中より奥の方に注いでしまうと・・・
ハートが中心に来ません。
イタリア系のピッチャーを使用している人は特に、注ぎ口までの距離が長いため、自分が思っているよりも奥で注いでしまっていることがあります。この点に注意しましょう。
また、注ぐ時の勢いが強いことでミルクが奥へ押しやられることもあります。
ハートの位置が左右どちらかにズレるという時は、ピッチャーの先がカップの中心に向かって注げていないか、ミルクがカップの中で回転して流されている場合があります。
④「コントラストをくっきり」と描くためには、キャンバス作りに尽きます。
キャンバスに染みや滲みがあったり、穴が空いていると、下地がぼやけてしまって綺麗なコントラストが生まれません。
理想的なキャンバス作りは、上図のように真っすぐクレマに差し込むような注ぎです。
これが勢いよく注ぎすぎたり、低い位置から注いでしまうと、
ミルクは奥から浮かびあがり・・・
クレマに穴を空けて、滲みが出来てしまいます。
コントラストの綺麗なラテアート作りにおけるキャンバスの重要性については、こちらの動画をご覧ください。
動画で見るハートのラテアート
こちらにハートのラテアート動画を掲載していますので、ご覧ください。