家庭用エスプレッソマシンとして、比較的ストレスなく使っていけるようになるのはこのあたりの機種からかと思います。

 

 エスプレッソ抽出機構もしっかりとし、スチームもそれなりのパワーが備わってきます。もちろん、業務用とは比べるべくもありませんが、練習すれば「ラテアート」をきちんと作れるようになる機種です。



【デバイスタイル エスプレッソマシン ブルーノパッソ TH-W020】

使用可能コーヒー:挽き粉、カフェポッド

重量:3.8Kg

消費電力:1100W

 

 デバイスタイルは、デザインと機能の両立を目指す日本の家電メーカーです。市場価格がほぼ2万円という値段から、この機種を低価格帯に入れるか中価格帯に入れるか相当悩みましたが、性能面から中価格帯で掲載しました。

 

 デバイスタイルは、かつて「デバイスタイル ブルーノパッソ PD-1」という家庭用エスプレッソマシンを販売していました。この機種はカフェポッド専用機種で、抽出とスチームが同時に出来て、かつスチームのパワーも強いという、家庭用機種とては破格に高性能の機種だったのですが、残念なことに販売が終了してしまいました(僕は今も、出張ラテアートで使っています)。

 

 その後継として生まれたのがこちらのTH-W020です。PD-1と比べると値段は半額以下なので、作りもそれなりにはなっていますがが、PD-1はカフェポッドしか使えなかったのに対して、この機種は挽き粉にも対応可能になっています。デバイスタイルの個性でもある、スチームのパワーはちゃんと引き継いでいて、PD-1ほどではないですが家庭用としては強力です。スチームの際は、スチームノズルのキャップ(青いパーツ)を取り外して使うと、ラテアート向きのフォームドミルクを作りやすいです。

 

 スチームもそうなのですが、僕の、このデバイスタイルTH-W020の一番の推しポイントはエスプレッソ抽出用のポルタフィルターです。家庭用マシンというのは、全体的に小型の作りをしているため、それに合わせてポルタフィルターも小さくなることがあります。事実、デロンギのマシンはポルタフィルターの内径が51mmが主流です。しかしこのデバイスタイルのフィルターバスケットは、業務用と同じ58mm内径です。ポルタフィルターの内径を小さくすると、その分、中のバスケットの容量がは小さくなるか、バスケット自体に深さを持たせることになるか、どちらかです。容量が小さくなればその分、中に入る粉の量は減りますので、それでエスプレッソのシングルで30mlを抽出すると、当然薄いエスプレッソになります。バスケットに深さを持たれば、その分、厚くなったコーヒー粉を通す為にエスプレッソ抽出には圧力が必要になるわけですが、家庭用マシンにはそれだけのパワーがありません。必然的に、抽出不足のエスプレッソになりがちです。その点、業務用と同じく、面積の広い58mm内径を備えたデバイスタイルのポルタフィルターは、業務用と同じ厚みでエスプレッソ粉をセットすることが可能です。タンパーも業務用と同じものを使えるため、このマシンを使った後に、もっと高価格帯のマシンが欲しくなった時も、サイズ合わせの為にタンパーを買いなおす必要もありません。

 

 このような理由で、僕の中では、このデバイスタイルのマシンはお勧めの1台に入ります。

 

 

【Delonghi デロンギ エスプレッソ・カプチーノメーカー kMix ES020J】

使用可能コーヒー:挽き粉、カフェポッド

重量:5.3Kg

消費電力:1050W

 シンプル&スタイリッシュ。使いやすさと美しさ、耐久性を兼ね備えたメタルボディ。本体重量も、プラスチック外装のEC221などと比べると、1.5倍以上も重くなっており、十分な高級感があります。世界的デザイナーのDarren Mullen氏(英国)によるデザインで、他のデロンギ・ラインナップと比べると異色の印象を受けます。

 

 マシン上部はカップウォーマーのように見えますが、中にフィルターバスケットが収納可能になっていて、カップを温める機能はありません。

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 デロンギのマシンは、挽き豆用、カフェポッド用と、ホルダー自体が別のものを使用するのですが、このkMixだけは、中のフィルターさえ変えれば、1本のホルダーで、挽き豆(1杯用)、挽き豆(2杯用)、カフェポッド用と使い分けることが可能です。つまり、この内部のフィルター収納庫があることで、片付けスペースがコンパクトのまとまるという利点があります。

 

 ここまで他のデロンギ・マシンと仕様が異なっているのは、理由があります。実はこのkMixシリーズは、デロンギのオリジナル商品ではありません

 

 デロンギが買収した「KENWOOD(ケンウッド)」という、イギリスの家電メーカーの製品に、デロンギが自分の所の名前を付けて販売したのがこちらです(同名の日本メーカーがありますが関係ありません)。

KENWOOD側の商品ホームページはこちら。見て頂けると全く同じ商品であり、一目瞭然です。)

 

 従って、エスプレッソの抽出機構やスチームに関しても、基本性能はデロンギではなくケンウッドの商品性能に準じます。ケンウッドは日本では知られていませんが、メーカー自体はヨーロッパでは一定のシェアを誇る家電メーカーで、その性能もデロンギと比べて遜色ありません。

 

 ヨーロッパでは、このようなOEM供給(他社ブランドの製品を製造すること。日本では自動車業界でよく行われています。)が非常に盛んで、エスプレッソマシン業界も例外ではありません。「あれ?このマシン、前に違うメーカーの名前で見たやつとそっくりだぞ?」と思ったら、大概OEMです。なので、販売メーカー名と機械の設計がまるで別。ということもあるので、注意が必要です。

 

 

【illy FrancisFrancis! X7.1 イリー フランシス・フランシス!】

使用可能コーヒー:専用カプセル(illy Iperespresso)

重量:5Kg

 イタリアのコーヒー豆焙煎メーカー「illy(イリー)」が、自社のコーヒーカプセルである(illy Iperespresso イペールエスプレッソ)を販売する目的で製作したエスプレッソマシン

 カラーバリエーションは、赤・白・黒の3色。

 

 ビアレッティとも共通していますが、とにかくデザインのインパクトが抜群です。スタイリッシュで、インテリアとしても最高の存在感を発揮します。

 

 商業的な話をすると、ネスレの「ネスプレッソ」にも言えることですが、この手のマシンは、一度売ってしまえば、購入者は、その後は専用カプセルを購入し続ける事になるので、そのカプセル(豆)の売上で、メーカー側は収益が上がる仕組みになっています。つまり、メーカーとしてはマシンは「豆の販促ツール」としての役割が大きいので、マシン売上自体で利益を出すより、マシンを薄利にしてでも沢山の人に買ってもらう方が豆(専用カプセル)が売れるのでメリットが高いわけです。そのため、マシン単体で見ると非常に高性能なものが、「この値段でいいの?」と思うような価格で買うことが出来ます。

 

 従って、このマシンを購入するかどうかの一番のポイントは、「イリーの豆が好きかどうか」です。性能的にはコスパは高いです。

 

 他の豆に浮気することが出来ないので、もしイリーの味に不満が出るようであれば、正直辛いです。けれど、「イリーの豆が本当に好き!」ということであれば、取り扱いの便利さや、安定したクレマの出るエスプレッソ抽出機構など、値段に比して非常に満足度の高い一台と言えるでしょう。スチーム機構もきちんとしたものがついています。

 

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【Delonghi デロンギ エスプレッソ・カプチーノメーカー ICONA ECO310

使用可能コーヒー:挽き粉、カフェポッド

重量:4Kg

消費電力:1050W

 デロンギの中位機種として人気の高い、アイコナ ECO310です。

 

 カラーバリエーションは、アズーロブルー、レッド、ホワイト、ブラックの4色。

 

 低価格帯のマシンとの違いは、メタル仕上げの外装による高級感。そして上部天板のカップウォーマー機構。そしてスチームノズルの形状です。ほとんどがプラスチックによる外装であった低価格帯のラインナップとは大きく違い、「家電製品」として完成した外観です。

 

 エスプレッソ抽出機構自体は低価格帯のものと共通パーツが多く、性能には大差ありません(むしろ、低価格帯のラインナップが値段のわりにしっかりしているのです)。スチーム機能は、ノズルの先を少し加工することで、デバイスタイルと同じくフォームドミルクの作りやすい形状になります。

 

 デロンギラインナップで低価格帯のものとの最大の違いはメタル仕上げの外装だったのですが、下記の新機種「EC680デディカ」がリリースされた現在では、個人的にはこちらを買うなら、もう少しだけ積んでデディカを買いだと思います。

 

 

【Delonghi デロンギ デディカ エスプレッソ・カプチーノメーカー EC680

使用可能コーヒー:挽き粉、カフェポッド

重量:4Kg

消費電力:1300W

 デロンギの中位機種として2016年に発売された新しい製品です

 

 カラーバリエーションは、メタルシルバーとレッド、ブラックの3色。

 

 メタリック外装による高級感。上部天板のカップウォーマー機構。そして何より目を引くのは、幅がわずか15cmという、スチーム機能のついたエスプレッソマシンとしては、おそらく最も薄いボディ形状です。ものを沢山置く必要がある家庭のキッチンにおいても邪魔にならないそのコンパクトボディながら、しっかりした抽出機構とスチームパワーを備えます。それはこれまで紹介してきたエスプレッソマシンの中では最も消費電力が多いことでも分かるかと思います。

 

 そしてこの、EC680デディカで新しく搭載された機能が「プログラムモード」。抽出量、抽出温度(高・中・低)、水硬度(軟水・中硬水・硬水)、スリープモード(9分・30分・3時間)の4つがプログラム可能です。

 

 抽出量のプリセットは、この価格帯ではなかなか見ないので、便利だと思います。

 

 また、抽出温度をいじることが出来るのは、このクラスの家庭用マシンでは相当画期的だと思います。一般に、エスプレッソに最適な抽出温度は90度と言われていますが、最新の抽出理論においては、一概に90度と決めつけない方向にシフトしつつあります。

エスプレッソマシンの進化 ~時代と共に常識も変わる~

 豆の種類やブレンド、ローストによって、抽出温度を変更できるような機能のついた業務用マシンが出てきていますが、それを(3段階とはいえ)家庭用に搭載されているのは凄いことです。

 

 水硬度の設定に関しては、もともと日本はコーヒーの抽出に向いている軟水なので、出荷時の設定のまま使って問題ありません。スリープモード設定は、電源の切り忘れなどをしやすい人にはいいかもしません。

 

 ラテアート用のフォームドミルクを作りたい方は、スチーム時にはノズル先の金属パーツ(フロッサー)を取り外して使った方が、綺麗なフォームができると思います。

 

 

【Delonghi デロンギ 全自動コーヒーマシン マグニフィカ ESAM03110S

使用可能コーヒー:豆(ホールビーンズ)、挽き粉

重量:10.5Kg

消費電力:1450W

 デロンギの全自動コーヒーメーカーのエントリーモデル

 コニカル式(コーン式)グラインダーを内蔵し、豆を挽くところからタンピング、エスプレッソ抽出まで、ボタン一つでやってくれる、デロンギの誇る「全自動エスプレッソマシン機構」。そのエントリーモデルがこちらです。

 

 このマシンはスチーム機能がまだマニュアルですが、これより上位機種になっていくと、スチームもボタン一つでやってくれたりと、どんどんオートメーション化が進行し、少々このサイトの趣旨からは外れていきますので、紹介するのはこのモデルまでに留めます。

 

 グラインダー内蔵というだけで、今まで紹介した機種とは全く違う商品になります。本体重量も堂々の10Kgオーバー。エントリーモデルとはいえ、全自動というだけあって、相当に多機能です。

 

 エスプレッソの抽出量はもちろん、濃さ(豆量)の調節、抽出温度は4段階で設定可能で、オートオフ機能、節電機能が付いています。抽出量も20ml~180mlまで設定できますので、通常のコーヒーメーカーのような使い方も可能です。

 

 グラインダーから抽出までオールインワンになった家庭用マシンというジャンルにおいては、正直、デロンギは頭一つ抜けていると感じます。挽き粉の使用も可能ですが、せっかくグラインダー内蔵で挽きたてを即使える機構なので、是非豆で使っていただきたい機種です。