タンピング(Tamping)は、ポルタフィルターに詰めたコーヒー粉を、タンパーを使ってぎゅっと押し固めて固定し、抽出を行う準備をする作業です。

 

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 試しにノータンピングで抽出してみると分かりますが、抽出自体はメッシュが調整されてさえいれば、ある程度のエスプレッソは出てきます。

 

 ただ、エスプレッソマシンは9気圧の力でコーヒーを抽出します。このとき、コーヒーには約24Kgの力がかかると言われています。タンピングをしないと、この力で粉が暴れてしまってスが入り(チャネリング)、湯通りのムラ・・・すなわち抽出ムラが起きてしまいます。これを防ぐために粉を「固定」するのがタンピングという作業の意味です。

 

 昔はものすごく強い力で押さえるべき(一説には40Kgと言ったバリスタもいたとか)という説もありましたが、現在の主流とされている考え方は、抽出の力(24Kg程度)の力がかかったときにコーヒー粉が暴れない程度、「15~20Kgの力で固定されればよい」、というものです。

 

 15~20Kgの力のタンピングというのがどれぐらいかは、体重計をタンパーで押してみれば一発でわかります

 

 そして何より重要なことは、「水平なタンピング」を行うことです。

 

 斜めにタンピングされてしまうと、タンピングの高さの低い方(つまりコーヒー層の薄い方)に湯が多く流れ、高い方への湯通りが少なくなり、結果的に薄いエスプレッソになってしまいます。

 

タンピングの水平

 

 「湯は抵抗の少ない方、少ない方へと」流れようとします。その中でバスケット内の湯にかかる圧力を均一にするのがタンピングの役割です。だから、水平にタンピングすることが大切なのです。

 

 具体的なタンピング手順についてですが、まず、フィルターを安定した場所に固定します。タンピングスタンドやタンピングマットの他、作業台の端の部分などもよく使われます。

 

 

テーブルタンプ

 

 次にタンパーをしっかり持ち、上から15~20キロの力で押さえつけます。この際、手首を曲げるのではなく、肘を直角に曲げることがポイントです。手首を曲げてしまうと、真っ直ぐ垂直に力を加えることが難しくなります。力は、毎回同じ強さでタンピングできるようにしましょう。

 

 悪い例
  ↓

  

 

 ただし、家庭用のエスプレッソマシンの場合は、ポルタフィルター自体が頑丈な作りをしていないため、あまり強くタンピングするとフィルターが壊れてしまいます。特にプラスチック製のフィルターの場合は、軽めのタンピングで表面を平らにならす感覚で行いましょう。

 

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 肘からタンパーの先までが一本の棒のようになっているイメージで押すと、真っ直ぐに力が入れやすいです。

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 タンパーが水平になっているかどうかを確認したい時は、人差し指と親指をタンパーのリムに当て、その感覚で水平を測ります。

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 仕上げにタンパーを半回転~1回転回します。

 

 これは表面を磨くためと、タンピング面の水平を確認するため、タンパーを持ち上げた時に底面に粉が付いてこないようにするためです。

 

 タンピングが終わったら、リムや羽に残った粉は払って綺麗にしておきます。

 

 ここで粉が付いていたりすると、エスプレッソマシンのシャワープレートやガスケット(パッキン)の劣化を早める原因になります。

 

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 綺麗なタンピングができていれば、表面はきっちり水平で表面も平らです。タンピングがまっすぐ出来ていないと、表面が水平に仕上がっていません。下写真は、わざと斜めにタンピングしてみました。

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…ちょっと極端にやりましたが、こうなると、均一な抽出が出来ませんので、タンピングは必ず水平に仕上げましょう。

 

 タンピングの力加減で抽出具合も変わります

 

 

 タンピングが強いと粉が詰まりますので、それだけ粉は抵抗を持ち、抽出には時間がかかり、エスプレッソは深く濃く、苦味や渋みがより強く抽出されます。タンピングが弱いと抽出時間が短くなり、エスプレッソは浅く薄く、酸味が際立ちます。

 

 タンピングで味の微調整を行うというのはこういうこと(抽出スピードを変えることで味を変える)を指しますが、技術としては高度なものです。まずは常に同じ力で一定のタンピングが出来るように練習し、抽出スピードはあくまでグラインダーの設定(メッシュの細かさ)で調整するのが考え方の順序だと思います。

 

 タンピングの動画を掲載しておりますので、ご参考までにご覧下さい。

 


 また、タンピングの力によって外側に逃げた(リム側にはみ出た)粉をタンパーの側面や頭でコツンとフィルターをノックして落とす方法や、タンピング後にリムの余分な粉を払うときに、フィルターを上下ひっくり返して粉を落とす人もいます。

この動画のような動作です。

 

 これらの方法は一時期はかなり多くの方々がやられていましたが、最近はだいぶ見なくなってきました。

 

 せっかくタンピングをしても、横からノックを行うことで、リムとの間に隙間が空いてしまい、その隙間を埋めるために2度目のタンピングが必要で、余計な時間がかかるからです(もしこの方法をやるときは、あくまで「軽くノック」してください)。また、タンパーの底面でノックすることは避けましょう。底面に傷が入るとタンピングが綺麗に出来なくなります。道具を大切に扱うという観点からも、出来れば行わない方がいいと思います。

 

 余計な粉を払う際にフィルターをひっくり返すの動きも、勢いで粉が落ちてしまう場合や、タンピングが緩んでしまうこともありますので、行わない方がいいと考えます。