ラテアート本の選び方と注意点。

 

  現在、ラテアートに関する書籍は様々なものが出版されています。

 

 ラテアートを全く知らないひと向けから、店舗でガンガンやっている玄人向けのものまで。 写真集みたいなライトなものから、職業バリスタとしての心構えや価値観などの読み物ウェイトが高いものまでいろいろと。  

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  同じようなレベル(段階)の読者を対象とした本は内容も重複する傾向があるので、3冊目くらいからは、「これ、前の本にも載ってたな。」というような内容が出てきます。

 

 それは一応頭に入れた上で、自分のレベルに合わせたもの、その時に自分が必要な情報が載っているものを選ぶと良いと思います。

 

 発行日にも目を向けるといいと思います。

 

 ラテアートの世界は日進月歩です。数年で置いてけぼりになってしまう情報もあります。同じバリスタさんが、古い本と新しい本の中で違うことを言っていることもあります。

 

 また、同じく頭に入れておくべきなのは、「バリスタさんによって言うことがバラバラ」だということです。

 

 本を出版されているバリスタの方々は、皆さん凄まじい技術の持ち主で、実績も経験もズバ抜けた方々ばかりです。

 

 しかし、例えばエスプレッソの抽出ひとつ取っても、1ショットに対する粉のグラム数が違ったり、抽出時間を、ある人は「20秒から25秒」と言っていたり、別の人は「25秒から30秒」と言っていたり、もっというと「28秒」と言う人もいたり、ミルクを温める温度を、「60度を超えてはいけない」という人がいれば、「60度以上65度未満」という人や、「65度前後」という人もいたり。   困ったことに、本当にバラバラです(笑)。

 

 ですが、誰が正解で誰が間違っているというわけでもない」 のです。

 

  コーヒーは嗜好品なので、人の数だけ回答があって当然です。

 

 数字を細かく見ると確かにバラバラですが、それはあくまで枝葉末節。根っこの部分を見れば、「おいしいカプチーノを淹れたい」「美しいラテアートを描きたい」「とにかくお客様に喜んで頂きたい」という気持ちは一緒です。

 

 エスプレッソやラテアートは、そういう気持ちの、あくまで「表現ツール」なわけです。

 

 その方向性に個性があったり、店舗の設備環境の違いや、客層のニーズに合わせた結果、細かい数字が違うだけです。

 

 単純に使ってる豆も機械も道具も技術も違うんだから、ぴったり同じ数字になるわけがないんです。それでも平均すれば大体は同じような数字になってきます。例えば抽出時間40秒なんて言っている人はいません。

 

 ラテアート本を読むと色々な数字が出てきますが、まずは、その数字を自分でも試してみる。そして自分の好みに合うか合わないかは、自分でジャッジする。それを繰り返していく中で、自分の理想、自分なりの表現を見つけていく。細かい数字の違いに、あまり振り回されすぎないようにするといいと思います。

 

  以下、現在入手可能と思われる色々なラテアート本を、大きく初級・中級・上級に分けてご紹介します。

 

 ご注意頂きたいのは、実践の難易度による分類ではないということです。

 

 「中級」で澤田バリスタの本を紹介していますが、当然、実践難易度は超上級です。この「初級・中級・上級」は、「ラテアートを知りたい」「ラテアートをもっと上手になりたい」「プロのバリスタという立場で学びたい」という分け方だとお考え下さい。

 

 中級の本でも、丁寧に説明されていますので、最初からそちらを購入されても問題ありません。 ご購入の参考になりましたら幸いです。    

 

 

ラテアート本の出版のお知らせ

 

当サイト著者の本

当サイト著者(管理者)の書いた本です。

フルカラー・ラテアートから3Dラテアート、シロップにステンシルとさまざまなアプローチを試みています。記載されたQRコードを読み込むこで閲覧可能な2時間を超える動画を収録していて、2,000円のラテアート本としてはかなりお得な内容に。当然、自分でお勧め出来ない本は書かないため(笑)、自薦で一冊ここにご紹介いたします!

2018年10月3日発売のため、現在はAmazon他で「予約受付中」の状態です。

 

ラテアート本(初級・ラテアートについて知りたい)

 レコールバンタンをはじめ、多くの講座で講師を務める篠崎 好治バリスタの本。内容は初級者向けの本で、わかりやすく記載されています。

 本の中では家庭用のマシン(Saeco マジックカプチーノ:下記)を実際に使用していて、「家庭用のマシンでこれだけのクオリティのものがきちんと出来る」ということが明確に伝わります。

 マシンを使ったエスプレッソの抽出の他にも、フリーポアでのハートやリーフ、マキネッタでのエスプレッソ抽出。シロップやパウダーを使ったラテアート。ラテアート以外にも、エスプレッソを使ったアレンジドリンクやデザート、軽食のレシピにまで及んでおり、111ページとはとても思えないような幅広い内容。

 

 その代わり一つ一つの項目に関しては紹介程度で、実際エスプレッソ/カプチーノに関するメインコンテンツは全体の半分ほど。ラテアートについて学ぶ本というよりは、「自宅で出来るバリスタワークの全体像」を理解するための本として捉えるといいかもしれません。

 

 出版年が少し前のものなので、同じ著者の本を買うなら、少し職業バリスタ向けの内容にはなりますが、「中級」で紹介している最新著作のラテアート&デザインカプチーノ 上達BOOK プロが教える本格テクニック (コツがわかる本)の方がお勧めです。

 

ラテアート本(中級・ラテアートをもっと上手くなりたい)

 

 同じく「レコールバンタン」専任講師の篠崎 好治バリスタの本。初版が2015年10月と、ラテアート本の中ではかなり新しい部類に入るだけあって、3Dラテアートの記載などもあります。

 

 3Dとかって、正直「プロバリスタ」の方が嫌う技術だと思うんです。だって、味の面をかなり犠牲にしてるから。それを分かりつつ、あえて誌面の中で紹介しているあたり、お会いしたことはありませんが、きっと柔軟な思考の方なんだろうなぁと思います。

 

 前述の「おうちでデザインカプチーノ」が家庭向けだった一方で、こちらは比較的業務向けな内容です。実際、コラムや前書きには、職業バリスタの方やそれを目指す方へ向けたメッセージが込められています。特に第一章「ラテアートの基礎知識」は、プロであっても再度確認することに意味があると思います。

 126ページとは思えない情報量なのは前作と同じ(篠崎バリスタらしさ?)。サービス精神にあふれた、盛り沢山な一冊です。

 

 

 同名タイトルの新装改訂版。旧版は同じような表紙で白背景。内容にも若干の改訂が見られるので、購入の際はこちらを買いましょう。

 

 冒頭は通常のバリスタワークについての紹介がなされ、そののち、個性の違う3人のバリスタによる作品の紹介とその作り方のページが大半を埋めています。

 

 「クール&ファイン」の章では、小塚孝治バリスタによるフリーポア10品(表紙写真の右下)。

 

 「シンプル&キュート」の章では、桃井かおりバリスタによるエッチング10品(表紙写真の右上)。桃井バリスタはエスプレッソマシンではなく、手鍋で牛乳を温めてフローサーで泡立てるスタイル。トッピングにはシナモンシュガーという個性のあるラテアート。

 

 「ユニーク&サプライズ」の章では、山下薫史バリスタによるエッチング10品(表紙写真の左上)。山下バリスタはエスプレッソのクレマだけではなく、ココアパウダーを使うことでより鮮明な線を引くことを個性としたラテアート。

 

 エッチングというものは、その描き手の個性によって好みが大きく分かれると個人的には考えているので、表紙の写真を見て「こういうのを描いてみたい!」と思うかどうかが購入の決め手になると思います。

 

 

 「デザインカプチーノ」のタイトル通り、エッチングに特化した内容の一冊。

 

 この手のラテアート本の中ではかなり沢山のラテアート杯数が掲載されているので、自分のレパートリーを増やすためには役に立つと思います。動物の表情の付け方やそのアレンジなども書かれており、自分なりのカスタマイズもやりやすいような配慮がなされています。

 

 エッチングのラテアートは絵柄の好みがあると思うので、購入にあたっては、表紙の写真を見て自分が惹かれるかどうか(描いてみたいと思うような絵柄かどうか)が一番大きいと思います。  

 

 

 初版が古いですが、「バリスタという職業」について、その心構えやあり方について、分かりやすく記述されています。

 

 「タイトルに偽りなし」とでもいいますか、とても学び多い本だと思いますので、仕事としてプロのバリスタを目指される方は一読されるといいと思います。

 

 

 日本ラテアート界を牽引する門脇洋之バリスタによる一冊。DVD付きバージョンもあります。

 

 門脇さんはもちろんご自身が第一線に立たれる現役のバリスタですし、現在は色々なセミナーなどでも後進の育成に熱心に活動されいらっしゃいます。

 

 ラテアート本としてはかなり早い段階でご出版された本ですので、お持ちの方も多いと思います。個人的には、ぜひ今の門脇さんのお考えを込められた本を読んでみたいと思います。

 

 

 職業バリスタ向けの本ですが、コーヒー好きの一般の方が読んでも面白いと思います。技術教本としても読み物としてもバランスが取れている一冊。

 

 初版は古いですが情報はまだまだ使えるものが多いです。個人的にはこの本を一番読み込んでラテアートを独学勉強したので、思い入れのある一冊です。

 

 13店舗とそのバリスタのラテアート、抽出スタイルが記載されていますが、改めて今、写真を見ると、載っているバリスタの皆様の写真が若いなぁと(10年前の本なので当たり前ですが)(笑)

ラテアートの描き方についての写真図解も豊富で、「ラテアートを学びたい」と思うならおすすめの一冊です。職業バリスタとしての心構えや店舗作りなどに関する読み物記事も、特にこれから店に立つ方、これから独立して店舗を持ちたいと思う方は読むことに意味があると思います。

 

 

 言わずと知れたラテアート世界チャンピオン澤田バリスタの、フリーポアに特化したラテアート本。

 

 特にミルクを注ぐときの、落ちていくミルクの流れの図解などはそれまでのラテアート本では見たことのないタイプのものであり、視覚的に「こういうことか」と理解出来る点でとても画期的(読んだからといって実際にそれが出来るとは言っていない)。

 

 Youtubeなどをみれば澤田氏のラテアート動画はみることが出来るため、それと合わせて本書を読めばさらに奥深く理解することができるでしょう。特徴としては、とにかくハイセンスな一冊。特に後半は、ラテアート本というよりは、ラテアートを使った写真集とでも呼べるような一冊です。

 

 

 同じくラテアート世界チャンピオンの澤田バリスタによる一冊。

 

 前半はラテアートに関する内容。前作Hiroshi’s ラテアート&バリスタスタイル (TWJ books)と重複する部分も多いですが、出版が前著作より3年経過していることもあり、ラテアートの工程における問題点や、その解決方法など、加筆されている箇所もあります。

 

 後半は、前作と同じく「ラテアーティスト」澤田洋史氏の、ラテアートを「エクストリームスポーツ」と同じ感覚で捉えたファッショナブルな写真が並びます。それはまるで競技者としてのアスリートのフォトグラフィーを見るかのようで、ラテアートというものが持つデザインの可能性を感じることが出来ます。もちろん澤田バリスタの技術あってのものですが。

 

 全編に渡り英語も併記されているので、これから海外でも活躍したいと思うバリスタが専門用語を覚えるのにもいいかもしれません。

 

 

 同じく澤田バリスタの手による、フリーポア特化の本。

 

 「家庭でも出来る入門書」「家で楽しむ本格エスプレッソ」という触れ込みを見て、「澤田バリスタが家庭用マシンを使って、こんなに綺麗なラテアートを!」みたいなものを想像して読んだのですが、家庭用マシンの紹介が2ページ(2機種+グラインダー1種)あるだけで、澤田バリスタは全て業務用マシンをつかって作成・撮影されているので、「家庭でも出来る入門書」と言われると、ちょっと違う気もします。

 

 内容としてはラテアートの本ではなく、完全にエスプレッソをベースとしたアレンジドリンク(そこに澤田流ラテアート)のアイデア集。抹茶はともかくとして、わさび・山椒・カルピス・ビールなどといった、「まさかの」めくるめく食材が澤田バリスタの超絶テクニックによって美しい一杯へと変貌していくさまは、驚きを超えて笑ってしまうほど。自分が勝手に抱いていた澤田バリスタのイメージが(いい意味で)変わってしまった一冊です。

 

ラテアート本(上級・プロのバリスタとして学びたい)

 

 ラテアートよりも、バリスタワークや店舗作りに対してウェイトを置いた本。つまり完全に業務バリスタ向けの一冊です。

 

 エスプレッソを使ったアレンジドリンクに非常に多くのページが割かれていて、メニュー作りのアイデア集としても価値の高い内容です。店舗勤務者には大いに参考になるでしょう。エスプレッソ抽出やミルクのフォーミングもきちんと押さえられています。

 

 初版は2005年と古いですが、店舗作りにかける考え方や情熱はいつの時代も変わることはありません。とても読み応えのある一冊だと思います。    

 

 

 日本バリスタ界の草分け、横山千尋バリスタによる一冊。独特の語り口が聴こえてくるようで、尊敬するバリスタの著作ということもありますが、個人的には拝読というよりは拝聴という気分で読ませて頂きました。

 

 単純に「ラテアートを学びたい」という目的で買うと、イメージと違う内容です。「バリスタ」の本です。 横山バリスタの「こだわり」は全て裏打ちされた根拠・理由があり、その考え方が書かれています。

 

 バリスタワークだけではなく読み物的な部分に関しては、バリスタを技術職ではなくサービス業として捉えておられる氏の姿勢や、「バール文化」の伝道師たらんとする想いが分かります。イタリア系バリスタを志向する人ならご一読あれ。  

 

 

 今やラテアート界の一大勢力、世界チャンピオンも輩出している「小川珈琲」でバリスタトレーナーとしてTeam Ogawaを統括した宇田吉範氏による一冊(氏は現在は生産管理や商品開発など、よりマネージメント部門を担当されている模様)。

 

 ラテアートの技術論として細かい数字を挙げて相当に具体的なところまで踏み込んで記載されている個性ある一冊。メチャクチャ勉強になります。もちろん、数字に関しては自分の店の商品として出すにあたって誤差は当然出てくるものですが、その考え方は理にかなっていて、職業バリスタであれば、是非とも読んでおきたいです。

 

 全編にわたって英語併記なので、英語のお勉強にもお役立ちな一冊。

 

 

トップバリスタによるラテアート

  「職業バリスタの本」です。

 

 ラテアートについての記載は殆どないので、ラテアートを学びたいという目的で購入をされると完全に的外れです。 登場する五人のバリスタの職業観を通してバリスタという仕事をリアルにイメージさせること、そして技術や道具の解説を経て、バリスタとして店舗を独立開業する(カフェを開く)というプロセスまで言及する本。

 

 「いつか自分で店を持ちたい」と考えている独立志向のバリスタ向けの一冊です。  

 

 

 日本人初のバリスタ世界チャンピオンを獲得した井崎英典バリスタをはじめ、数多くのトップバリスタを輩出している丸山珈琲。そこでバリスタトレーナーをされていた(現在は独立されて、株式会社アクトコーヒープランニングを設立)阪本義治さんの著作です。

 

 バリスタを「コーヒー界のソムリエ」と捉え、コーヒーをエスプレッソの「素材」という観点からその味を引き出すためのアプローチ。そして素材そのものの理解など、ディープな内容の記述がたっぷりと書かれています。

 

 特にバリスタチャンピオンシップを通してバリスタとしての成長を積極的に促す内容は、他の書籍には見られないものです。バリスタ界でこういった競技会に挑戦してみたいと考える人は、是非読んでみるべき一冊だと思います。 飲食業以外の方には、若干専門的すぎるかもしれません。    

 

 

 

 

 20人のバリスタとそのスタイルについて多くのページが割かれています。

 

 飲食業従事者向けの内容。 「バリスタのための接客強化書」「バリスタ独立物語」など、わりと広い内容について書かれています。  

 

 

 上記Vol.2と比較的似た内容構成。  巻頭の特集でバリスタ育成法について書かれており、店舗責任者にとって学びのある本と言えるでしょう。

 

 

 

その他コーヒー本

 その他、コーヒー全般に関わる本として、下記4冊をご紹介します。いずれも良書だと思う本です。 コーヒーそのものへの理解は、バリスタとしても役立つ知識ですし、単純に趣味としてもとても楽しいです。